「最近目覚めがスッキリしない…」、「朝から体がだるくて集中力が続かない…」などと感じたことはありませんか?これらの不調には、タンパク質不足が関係している可能性があります。タンパク質は、人間の体に欠かすことのできない栄養素です。タンパク質が不足すると、体にさまざまな影響が現れます。この記事では、タンパク質不足による問題について解説。合わせて、タンパク質が含まれる食品や効果的な食べ方も紹介します。
日本抗加齢医学会認定専門医
日本整形外科学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
経歴・詳細
日本大学医学部卒業後、同大学の整形外科へ入局。医局長を務めたのち、医療法人社団トーイシン会市谷八幡クリニック院長に就任。日本大学整形外科の兼任講師、臨床准教授としても活躍。
◆クリニック公式サイト:http://www.ichigayahachiman-clinic.jp/
タンパク質が不足するとどんな問題が起きる?
タンパク質は、「炭水化物」や「脂質」とともにエネルギー五大栄養素のひとつです。筋肉や臓器、皮膚や骨、歯、髪の毛といった体の構成成分となります。そのほか、身体コンディションを調整する役割を担っているのです。
タンパク質は、20種類のアミノ酸が鎖状に連結してできています。このアミノ酸のうち、9種類は体内で生成できないため食事で摂取する必要があるのです。
特に、食事量が減少しやすい高齢者は、タンパク質不足に注意しなくてはいけません。また、発育が盛んな乳幼児や、成長期の子どもにもタンパク質は必要となります。
赤ちゃんが飲む母乳にも豊富なタンパク質が含まれており、牛乳と比べるとその量は約3倍です。胃の中で凝固することのない消化しやすい成分で構成され、赤ちゃんの健やかな発育をサポートします。
このように、タンパク質は小さな子どもからシニアまで、人体に深く関わる栄養素です。そのため、タンパク質が不足してしまうと以下のような問題が起こると考えられます。
タンパク質が減少する
タンパク質は、筋肉を構成する重要な要素です。そのため、体内のタンパク質が不足することは避けなければいけません。
特に、ダイエット中には注意が必要です。減量を目的に食事量を減らしていると、必要なエネルギーだけではなく栄養素も不足してしまいます。飢餓状態であることを察知した体は、脂肪ではなく筋肉を消費しながらエネルギーを生み出そうとするのです。
さらに、適切な食事を摂らないまま運動だけを行うと、タンパク質はみるみる減少してしまいます。
そのため、たとえダイエット中であってもタンパク質を中心としたバランスの良い食生活が大切です。
健康と美容のコンディションを保つ
肌や骨を構成するコラーゲンも、タンパク質のひとつです。体内に存在するコラーゲン量は、すべてのタンパク質の約25%を占めるといわれています。そのため、タンパク質不足は美容のコンディションにも影響を与えると考えられています。
最近老けて見られる、表情がさえないと感じる方は、タンパク質不足が大きく関係しているといえるでしょう。
タンパク質が減少すると、これらの体のコンディションに影響を与えるので、健康を維持するためにも、タンパク質を意識的に摂取する食生活が重要となります。
体を作るだけじゃない!タンパク質の重要な役割(ペプチド、アミノ酸、アルブミン)
タンパク質不足が身体に影響するように、タンパク質には体を構成する以外にさまざまな働きがあります。また、連結するアミノ酸の数や種類によって多くの種類が存在します。ここでは、「ペプチド」、「アミノ酸」、「アルブミン」について、それぞれの重要な役割に着目してみましょう。
ペプチド
連結するアミノ酸の数が50個以下のものは「ペプチド」と呼ばれます。アミノ酸数が2~10個のものはオリゴペプチド。それ以上のものがポリペプチドです。
アミノ酸
アミノ酸は、タンパク質を構成する成分です。私たちが食事として摂り入れたタンパク質は、まずは口内でかみ砕かれ、胃酸によって消化しやすい状態に加工されます。その後、胃や十二指腸で分解され、小腸でペプチドやアミノ酸となって吸収されるのです。
さらに、体内では合成されず、必ず食物から補給しなければいけないものは「必須アミノ酸」と呼ばれます。体内にある糖質や、糖質から作り出せるものは「非必須アミノ酸」です。
身体に欠かせないため赤ちゃんや子どもにも必要です。そのため、子どもから大人まで積極的に摂取したい栄養素のひとつであるといえるでしょう。
アルブミン
アルブミンは、約600個のアミノ酸からできたタンパク質です。血液に含まれる液体成分「血漿タンパク」の約60%を占めます。
体に欠かせない栄養素「タンパク質」毎日どれくらい食べればいいの?
「日本人の食事摂取基準」によると、成人が1日に摂取したいタンパク質の量は、総エネルギーの13~20%とされています。1日の総エネルギー量は性別によっても異なり、具体的な量は以下のとおりとなります。
タンパク質の食事摂取基準 | ||
---|---|---|
成人男性 | 成人女性 | |
推定平均必要量(g) | 50 | 40 |
推奨量(g) | 60 | 50 |
推定平均必要量とは、年齢や性別ごとに必要だと思われる栄養素の平均値です。1日に必要なタンパク質を摂取するためには、まずは男性で50g、女性は40gを目指しましょう。
そのうえで、可能であれば男性は60g、女性は50gの摂取が推奨されています。さらに、産前産後は以下のように摂取量を増やす必要があります。
産前産後のタンパク質付加量 | ||
---|---|---|
推定必要量(g) | 推奨量(g) | |
初期 | ±0 | ±0 |
中期 | 5 | 10 |
後期 | 15 | 20 |
授乳期 | 15 | 20 |
妊娠中は、以上の量を意識しながらバランスの良い食生活を心がける必要があります。母乳が必要な授乳期には、赤ちゃんの健やかな成長を支えるためのタンパク質が必要です。
とはいえ、タンパク質の過剰摂取は、消化吸収する臓器に負担をかける可能性もあります。摂取したタンパク質をスムーズに吸収するためにも、適正量をこまめに摂取するように心がけましょう。
タンパク質を摂取していきいきとした毎日を
生命維持に欠かせないタンパク質は、不足すると体にさまざまな影響をもたらします。美容のコンディションのように目に見えるものだけではなく、体の健康に関わるものも多いため注意が必要です。
タンパク質を上手に摂取するには、食品の塩分や脂肪分に注意することが大切。自分に合った方法で食習慣に取り入れ、いきいきとした毎日を目指しましょう。