都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。
ファイトケミカルはなぜ嘘だと言われる?
健康パワーで注目されている、第7の栄養素「ファイトケミカル(phytochemical)」。一度くらいは耳にしたことがあるという方も多いかもしれません。ファイトケミカルは、植物に含まれる化学物質のことを指します。
植物が生命を維持するために、紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされたもので、植物の色素・香り・辛味・ネバネバなどの成分というと、わかりやすいかもしれません。
例えば、ブルーベリーやブドウにはアントシアニン類、大豆にはイソフラボン類、セロリ、パセリ、ピーマンにはフラボン類のポリフェノールが含まれており、これらがファイトケミカルの一種です。多くの植物に含まれ解明段階にあるものも多いのですが、注目されているのが、ファイトケミカルが持つ「健康パワー」です。
現代社会に生きる私たちの体は、食生活や飲酒、たばこやストレスなどの生活習慣によって影響を受けやすい傾向にあります。ファイトケミカルは、そんな体を守り、キレイな体を保つ作用を持っているのです。
しかし、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質、ビタミン・ミネラル、食物繊維の6つは、生きていくうえで必要な6大栄養素であるものの、これらの栄養素だけでは足りないかもしれません。
だからこそ取り入れていきたいのが、健康パワーを持つファイトケミカルです。健康パワー作用については、ファイトケミカルは人の体において、6大栄養素に匹敵する栄養素とも考えられるかもしれません。
特にモロヘイヤやブロッコリーなど、緑の濃い野菜で健康パワーが強いことが明らかとなっています。
そんな魅力的に見えるファイトケミカルですが、一方では「ファイトケミカルの効果は嘘」と耳にすることもあります。体にとって良いはずのファイトケミカルが、なぜこのように言われてしまうのでしょう?
その理由は、ファイトケミカルについて、まだ解明されていない部分が多いことが挙げられます。最近になって注目されはじめた栄養素であり、ファイトケミカルの研究知見はまだ十分といえません。そのため、ファイトケミカルに対して、懐疑的な見方をする人が少なからずいるのです。
また、ファイトケミカルを過剰摂取することによって、健康被害をもたらすのではないかという懸念を持っている人もいるようです。しかしこれは、他のものに対しても同じことが言えます。例えば、栄養素が高く栄養バランスも良いと言われている牛乳ですが、人によっては「牛乳を飲みすぎると下痢しやすい」ことがあります。
これは、乳糖を吸収・分解する力が低い体質の人に限って起こることですが、牛乳の栄養が解明される以前であれば、きっと不安要素となったことでしょう。このように、個人の体質によっては、体に良いと言われる食物でも体に不利益な反応が起きることがあるのです。
ファイトケミカルも少なからず、吸収・分解する力、疾患によっては、過剰摂取により健康被害をもたらす可能性があります。こうした懸念点も、ファイトケミカルの効果が嘘と言われる理由のひとつとなっているようです。
このように、ファイトケミカルについては解明が進められている段階ではありますが、現に、厚生労働省のサイトでは、ファイトケミカルの一種であるポリフェノールやカロテノイドが「ファイトケミカル」として紹介されています。
体を守る仕組み
まずは、体を守る仕組みを見ていきます。人間は本来健康のために体を自ら守っています。その仕組みを支えているのは何といっても、ビタミンやミネラルなどの栄養素です。しかし、加齢や生活習慣によって各栄養素は常に減少しています。
ファイトケミカルの摂取量目安
ファイトケミカルが体に良いと言っても、過剰に摂取することが、必ずしも体に良い影響を与えるとは限りません。
つまり、ファイトケミカルを摂取し体に良い影響を与えるためには、ただやみくもにとればいいということではなく、適切な摂取量を守ることが大切です。
最近では、カカオポリフェノールが注目されちょっとしたブームになりましたが、カカオポリフェノールを積極的にとろうと高カカオチョコレートを食べ過ぎると、脂質やエネルギー、カフェインをとり過ぎてしまうことになります。
高カカオチョコレートは普通のチョコレートと比べると脂質量が多いため、健康のために積極的に摂取した結果、かえって肥満につながる可能性もあるのです。このように、ファイトケミカルを意識するあまり、特定の食物ばかり食べる偏った食生活を送ると、思わぬ副作用を招く恐れがあります。
ファイトケミカルは、明らかにされているものだけでも約1,500種類あり、いまも研究が進められている栄養素です。そのため、厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準摂取量(2020年版)」でも、ファイトケミカルの摂取目安量は具体的に定義されていません。
例えば、ファイトケミカルのひとつであるカロテノイドは、欠乏症が確認されていないため、現時点では食事摂取基準を定めることが適当と考えられていないのです。
ただし、生活習慣対策をし、健康な生活を維持するための目標値のひとつとして、「野菜を1日350g以上食べましょう」「野菜を1食1皿以上・1日5皿分を食べることを目指しましょう」と言われています。しかし、現代社会において野菜を毎日350g以上食べることは容易ではないでしょう。
ファイトケミカルは、主に野菜に多く含まれています。野菜不足な食生活に陥りやすい現代社会に生きる私たちですから、ファイトケミカルの過剰摂取を心配する必要はないとも考えられるかもしれません。
むしろ、野菜不足な食生活、偏った食生活の人は、健康のために積極的に野菜を食べるべきです。野菜を積極的に食生活に取り入れることが難しい場合は、サプリメントを活用しファイトケミカルやビタミン、ミネラルを補うのもひとつの方法です。
サプリメントで摂取する場合には、1日の摂取量目安が決められています。ファイトケミカルの過剰摂取が不安、毎日ファイトケミカルの摂取量を計算していられないという方には、サプリメントの活用もよいかもしれません。
ただし、サプリメントをとる場合には、なおのこと過剰摂取に注意が必要です。サプリメントに記載してある用法と用量を厳守してください。服用中の薬があり、それとサプリメントを併用する場合には、事前に医師や薬剤師に相談しておくと安心です。
このほか、お客さま相談センターを設けているサプリメントメーカーも多いので、気になることがあればこういった窓口を利用するのもよいでしょう。
ファイトケミカルを適切な量だけ簡単に摂取しよう
どんなに良いものでも、必ず適切な量があります。ファイトケミカルに限らず、体を健やかに保つ栄養や食物は、適切な量をとり入れることが欠かせません。キレイな体を維持するためには、運動や睡眠といった生活習慣、食生活を見直し、バランスの良い食生活を送ることが最善です。
とはいえ、なにかと多忙な生活の中で、食生活を見直し改善することが難しい場合も多いでしょう。ファイトケミカルを満遍なく食物から補おうとすると、さまざまな種類の野菜や果物をそろえる必要があり、調理する労力や時間も必要になります。
サプリメントを活用すれば、適切な量を簡単に摂取できるメリットがあります。手軽に必要な栄養素がとれるサプリメントは、現代社会に生きる人々の健康をサポートする重要な役割を果たしているといえるでしょう。
注目されている栄養素だからこそ、ファイトケミカルのサプリメントは続々と登場しています。さまざまなファイトケミカルのサプリメントがあるからこそ、効率よくファイトケミカルを摂取し、健康パワーに優れたサプリメントを選ぶ必要があるでしょう。
ファイトケミカルは、できるだけ多くの種類を少しずつ摂取することが理想的です。多くの植物原料を使ったもので、さまざまな研究が行われたうえで作られているサプリメントがよいでしょう。消去活性液体・顆粒・タブレットタイプとサプリメントにもいろいろな形状があるので、自身が飲みやすく、続けやすいものを選んでください。
また、続けやすい価格帯であるかどうかも重要なポイントです。どんなにいいものでも、続けられないと意味がありません。自分に合ったものを正しく選び、上手に取り入れていきましょう。
健康パワーを持つファイトケミカルは、私たちの健康の底力を高める心強い味方。サプリメントをうまく活用しながら、食生活、生活習慣を見直し、若々しい体を目指していきましょう。