健康を維持・増進するためには、バランスの良い食事が欠かせません。しかし、いざ食事のバランスを意識しようと思っても、なにを重視すればよいかわからない方も多いでしょう。そこで今回は、バランスの良い食事の考え方や、具体的な献立例をご紹介します。
一般社団法人 日本ダイエットスペシャリスト協会理事長
健康運動指導士
生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値に着目し、低インシュリンダイエットを提唱。主な活動として、各健康保険組合・企業・各都道府県での講演活動、雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などの取材も多数受けている。
◆一般社団法人 日本ダイエットスペシャリスト協会 公式ホームページ:https://jdsa.co.jp/
バランスの良い食事とはどのようなもの?
バランスの良い食事とは、「心と身体を健康に保てる食事」のことです。バランスの良い食事に「絶対にこれでなくてはいけない」というものはなく、人それぞれの体質やライフスタイルによって正解は異なります。
また、「野菜を食べていればOK」「油っぽいものが少なければOK」というのも大きな間違いです。炭水化物・タンパク質・脂質の「三大栄養素」のバランスを保ちつつ、ビタミン・ミネラル・食物繊維といった健康につながる栄養素を意識して献立を組み立てることが大切です。
日本人の食生活で不足しがちな栄養素
個人差はあるものの、日本人の食生活は以下のような栄養素が不足しやすいとされています。
● タンパク質
● 食物繊維
● ビタミンA
● ビタミンD
● ビタミンB1
● ビタミンB2
● ビタミンB6
● 葉酸
● ビタミンC
● カリウム
● カルシウム
● マグネシウム
● 鉄
● 亜鉛
食事のバランスを改善したい場合は、これらの栄養素を積極的に摂取するよう意識してみましょう。
また、意外と見落とされがちな栄養素が、最大栄養素のひとつである「脂質」です。余分な脂肪に結びつくイメージからか、脂質は「健康によくないもの」と考えられる傾向があります。しかし、脂質は私たちの身体にとってなくてはならない栄養素であり、とくに「必須脂肪酸」は体内で合成できないため、意識して摂取しなければなりません。
なかでも青魚に多く含まれるDHA・EPAはさまざまな機能性が期待でき、健康にとって有用な栄養素です。青魚の独特な臭みが苦手な方や、より効率的に栄養素を摂取したい方は、サプリメントを活用するのもよいでしょう。
日本人の食生活で摂りすぎに注意したい栄養素
厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、脂質から摂取したエネルギー量は全体の20~30%未満に抑えるとよいとされています。しかし、同省の「国民健康・栄養調査」によれば、脂質から摂取したエネルギー量が全体の30%を超えている人の割合は、20代男性で35%、20代女性は44.4%という結果になっています
上記のとおり、脂質は私たちの身体になくてはならない栄養素ですが、やはり摂りすぎはよくありません。脂質を摂取する際は、「量」と「質」を両方意識することが大切です。身体に有用な脂質の摂取を増やしつつ、全体の摂取量は適量を守りましょう。
脂質の質を気にするうえで注意したいのが、「飽和脂肪酸」です。肉やバターなどの動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、血中総コレステロールや循環器疾患のリスクの増加につながると考えられています。
一方、植物や青魚などの脂は「動脈硬化のリスクを下げる可能性がある」として世界中で研究が進められています。
身体のことを考えるなら、飽和脂肪酸は極力減らし、代わりに不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことが大切です。
バランスの良い食事の組み立て方
食事のバランスを考える際は、厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」が役立ちます。
上図の「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」のバランスを意識し、1日のなかで摂取量を調整してみましょう。
毎食バランスの良い食事をとるのが理想ですが、忙しい現代人にとってはなかなか難しいものですよね。それでも、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上はとるのがおすすめです。
たとえば、コンビニや外食でも「パスタ」や「丼ぶり」などの一皿料理だけで済ませるより、サラダをプラスするなどして栄養を補うとよいでしょう。また、一皿料理でも、タコライスのように主食・主菜・副菜が1つのお皿に盛り合わせた料理がおすすめです。
なお、献立を組み立てる際は、1日あたりの摂取カロリーを考慮することも大切です。1日の必要カロリーは年齢や性別、身体活動レベルによっても異なります。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い | ふつう | 高い | 低い | ふつう | 高い |
18~29歳 | 2,300kcal | 2,650kcal | 3,050kcal | 1,700kcal | 2,000kcal | 2,300kcal |
30~49歳 | 2,300kcal | 2,700kcal | 3,050kcal | 1,750kcal | 2,050kcal | 2,350kcal |
50~64歳 | 2,200kcal | 2,600kcal | 2,950kcal | 1,650kcal | 1,950kcal | 2,250kcal |
65~74歳 | 2,050kcal | 2,400kcal | 2,750kcal | 1,550kcal | 1,850kcal | 2,100kcal |
75歳以上 | 1,800kcal | 2,100kcal | - | 1,400kcal | 1,650kcal | - |
たとえば、肉体労働に従事する40代男性の1日の必要カロリーは3,050kcal、自宅で過ごすことが多い60代女性の1日の必要カロリーは1,550kcalと考えられるでしょう。 参考までに、それぞれの必要カロリーをもとにした献立例をご紹介します。
肉体労働に従事する40代男性の場合
【朝食】812kcal
● トースト2枚(298kcal)
● 目玉焼き(121kcal)
● 具だくさん野菜スープ(100kcal)
● ポテトサラダ(99kcal)
● 牛乳コップ1杯(126kcal)
● りんご半分(68kcal)
【昼食】1016kcal ● ごはん300g(468kcal)
● わかめの味噌汁(31kcal)
● 豚肉のしょうが焼き(357kcal)
● ほうれんそうのおひたし、煮豆
【間食】138kcal
● 飲むヨーグルト(138kcal)
【夕食】1099kcal
● ごはん300g(468kcal)
● じゃがいもと玉ねぎの味噌汁(49kcal)
● 穴子と野菜の天ぷら(おおよそ405kcal)
● 里芋のにっころがし(76kcal)
● 冷奴(99kcal)
● みかん1個(37kcal)
<合計>3,065kcal
自宅で過ごすことが多い60代女性
【朝食】337kcal
ごはん120g(188kcal)、納豆(92kcal)、大根の味噌汁(33kcal)、きゅうりとわかめの酢の物(24kcal)、【昼食】600kcal
和風きのこパスタ(443kcal)、サラダ(9kcal)、桃1個(81kcal)、ヨーグルト(67kcal)
【間食】
チーズひとかけ(80kcal)
【夕食】541kcal
ごはん120g(188kcal)、刺し身(115kcal)、ひじき煮(131kcal)、わかめスープ(39kcal)、りんご半分(68kcal)
<合計>1,558kcal
バランスの良い食事 1週間分の献立例
ここからは、バランスの良い食事の献立例を1週間分ご紹介します。
今回は、主菜のなかでも積極的に摂取していただきたい魚のメニューを中心にまとめてみました。魚のなかでも、サバやマグロにはDHA・EPAが豊富に含まれています。DHA・EPAは必須脂肪酸の一種であり、人体ではほとんど生成できないため、食事から積極的に摂取する必要があります。各メニューの詳細は、それぞれのリンクからご確認ください。
レシピは作りやすい分量を記載しています。余った分は冷蔵または冷凍保存してください。
月曜日の献立
一週間のはじまり。ぼんやりしがちな月曜日には、ピリッと辛いアボカド鉄火丼!
ピリッと辛くて美味しい♪アボカド鉄火丼
【材料(1人分)】
● ご飯 150g
● アボカド 1/2個
● まぐろ(刺身用さく) 70g
● レモン汁 小さじ1/2
【A】
● 麺つゆ 小さじ2
● コチュジャン 小さじ1
● おろしにんにく 小さじ1/2
● おろししょうが 小さじ1/2
● 韓国海苔 2枚(板のり8枚切り)
● 卵黄 1個分
● 白ごま 小さじ1/2
● 刻み小ねぎ 5g
● ごま油 小さじ1
【作り方】
1.韓国海苔は食べやすい大きさにちぎる。
2.アボカドとまぐろは約2cmの角切りにする。ともにボウルに入れ、レモン汁を加えてよく和える。
3.2に【A】を加えてよく和える。
4.器にご飯をよそい、韓国海苔、2をのせる。卵黄を落とし、白ごま、刻み小ねぎを散らす。仕上げにごま油を垂らす。
ひじきのマリネ
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根菜いっぱいの和風ポトフ
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火曜日の献立
一汁三菜のほっと落ち着く献立です。基本の肉じゃがをおさらいしてみましょう。
肉じゃが
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きゃべつの簡単レモン塩浅漬け
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味噌ダレ冷奴の胡麻七味がけ&アボカドの胡麻七味白和え
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みそ玉
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水曜日の献立
疲れがでてくる水曜日には、やさしい味付けのこんな献立がおすすめです。
大豆と塩こんぶの炊き込みごはんと白だしのいろいろ根菜煮
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ふわふわお豆腐つくね
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木曜日の献立
野菜もタンパク質もきちんととれる主菜。お弁当にもおすすめです。
むね肉のヤンニョムチキンプレート(三色ナムル/雑穀ごはん)
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さばとトマトの味噌スープ
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金曜日の献立
土日の予定にそなえて、メインはあっさり脂質控えめなマグロステーキ。
マグロの黒こしょうステーキ
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ゴーヤと夏野菜のガレット
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土曜日の献立
でかける前にサクッと済ませたいおうちランチにおすすめの献立です。一皿で主食も野菜もたっぷり食べられます。
さっぱりヘルシーなサラダラーメン
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エビときゅうりの酢の物
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日曜日の献立
日曜日はスパイスたっぷりのスープカレーにチャレンジ。副菜はあっさり目で、箸休めにぴったりなレシピをご紹介します。骨付きチキンのスパイススープカレー
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みょうがの甘酢漬け
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にんじんとオレンジのサラダ
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まとめ
食事のバランスを改善するためには、まず三大栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質)のバランスを意識しつつ、ビタミンやミネラル、食物繊維などを意識して摂取することが大切です。
また、1食で完璧なバランスを取ろうとせず、1日のなかで栄養バランスを調整するのが無理なく続けるコツです。「食事バランスガイド」を参考にしながら、自分の食の好みやライフスタイルに合わせて、バランスの良い献立を目指しましょう。
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