毎日の食生活に必ずといっていいほど登場する「卵」。生で食べても、半熟でも、茹でても美味しいという汎用性の高さから、好んで食事に取り入れているという方も多いかもしれません。ただ、そのコレステロール値の高さから、「1日1個以上食べるのは健康に良くない」といわれているのを聞いたことがある方も多いことでしょう。
卵は本当に1日1個でないといけないのでしょうか? 真相を探っていきます。
コレステロールが引き起こす動脈硬化?
年を重ねると、コレステロールを控えるように担当医師から言われることも。そもそも、コレステロールを多く摂取するのは良くないのでしょうか。
血液内でコレステロールが増加すると、動脈硬化が進み、気づかぬうちに血液の通り道が狭くなってしまいます。硬化した動脈は血管壁にコレステロールのこぶを作り、血栓となって突然の心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのです。
これだけ聞くと、コレステロールの過剰摂取は非常に危険そうだと感じますね。コレステロールは卵だけでなく、肉や牛乳などにも多く含まれるため、気を付ける必要がありそうです。
食事によるコレステロール制限は効果がない!?
しかし、2015年5月1日に日本動脈硬化学会で、食事によるコレステロールはあまり制限する必要がないという結果が発表されました。なんと、食事によってコントロールできるコレステロールは体内のわずか1割程度。卵から摂取されるコレステロール量を考えると、卵によって健康が左右されることは非常に少ないのです。
体内のコレステロールのほとんどは、肝臓で作られます。種類もHDL(善玉)、LDL(悪玉)だけでなく、酸化LDL、AGE化(糖化)LDLなどさまざまなものがあり、これらが原因の病気については、食事以外のさまざまなアプローチ方法が必要になってきます。卵を食べることだけが、一概にコレステロール値を上げている訳ではないのですね。
もちろん、LDL(悪玉)コレステロール値が高い方は過度な摂取はするべきでないでしょう。ただ、食事で全てを解決しようと無理に制限をせず、血管系疾患の検査を今一度きちんと受け、多角的な解決法を医師とともに探っていきましょう。
ちなみに、卵黄に含まれる「レシチン」や「オレイン酸」、卵白に含まれる「シスチン」という脂肪酸は、コレステロールを体内に蓄えることを抑え、悪玉コレステロールを下げるのにも効果があるそうです。また、国で定められた、コレステロールの正しい摂取量は男性750mg以内、女性600mg以内。卵1個あたりのコレステロール量は約235mgのため、食事によっては1個以上食べてもなんら問題はないでしょう。
コレステロールを減らすより、有効な食事方法
卵を摂取すること以外で問題となるのは、酸化LDL、AGE化(糖化)LDのような酸化・糖化した悪玉コレステロールです。酸化や糖化は私たちの体の至る所で常に起きている自然現象ですが、同時に私たちのカラダの細胞を傷つける作用があります。卵をコレステロール値が高い食品だと制限するよりは、酸化・糖化現象を食い止めるための食事や、料理方法を選んだ方が良いでしょう。
酸化した油は風味が悪くなり、健康にも良くないという報告があります。なるべく新鮮なものを使いながら料理をしましょう。
健康的な食生活には必須とも思われた「卵は1日1個」説ですが、あまり鵜呑みにしすぎるのも良くありませんね。コレステロール値が気になり出したら、まずは医師に相談し、有効な手段を探っていき、バランスの良い食生活を心がけましょう。
【参考文献】
- 【参考書籍】
牧田善二著 『医者が教える食事術 最強の教科書―20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方』 ダイヤモンド社