抗生物質は細菌をやっつけるのに役立つ薬ですが、その使い過ぎが世界的に話題です。
「病気じゃないから抗生物質を利用してない」と思ったあなた。実は毎日のように抗生物質に接しているかもしれません…。
牛やニワトリも抗生物質をのむの?
抗生物質とは細菌が引き起こす感染症の薬です。結核やコレラのような重大な病の特効薬で、多くの人達を救ってきました。
しかし今、人間の薬としてだけでなく、牛や豚といった家畜の健康維持のためにも使われています。家畜は生産性を高めるために、狭いスペースでより多く育てられます。数万匹から数十万匹の豚や鶏がいると怖いのが、病気です。病気予防のために、家畜にたくさんの抗生物質をエサにまぜて与えているのです。
また、抗生物質を与えると成長が促進されるため、家畜は早く大きくなるのです。こうして育った家畜を私たちはお肉として日々食べています。
フルーツにも抗生物質?理由は見た目!?
病気になるのは動物だけではありません。野菜や果物も病気になります。
だから、野菜や果物といった植物にも病気予防として、抗生物質の添加がされています。
それだけではありません。見た目を良くするためにも抗生物質は使われます。
植物もぶつかるとキズができ、そこから全体が傷みます。とくに糖度の高いフルーツはちょっとのキズから傷みが全体に回りやすいのです。日本の消費者は見た目を気にするため、そして糖度の高いフルーツを好むため、日本のフルーツ生産の場では抗生物質が多用されています。
便利なのに、どうして抗生物質の多用しちゃダメなの?
抗生物質を必要以上に使うと、抗生物質へ耐性を持った細菌が生まれるからです。細菌だって、進化するのです。薬剤耐性菌が抗生物質をエサとして使う農場で多く発見されています。
怖いことに、抗生物質が効かない耐性菌に人間が感染するケースが世界的に増えています。
新しい抗生物質で退治できる感染症もありますが、細菌側もどんどん進化するために「いたちごっこ」になっているのです。
ここで気を付けたいのは「抗生物質は怖い。もう利用をやめよう」とならないで欲しいのです。
「病気を治す」ためには抗生物質は今も、とても頼りになる存在です。お医者さんが診断し、薬剤師さんが処方した抗生物質はしっかりと服用してくださいね。
頼りになる薬だからこそ、予防や見た目のために使うのではなく、本当に必要なときに使うべきなのです。
やっぱり大事。食材の由来を知ろう!
抗生物質を家畜や野菜に大量投入する生産が流行るのは、このような生産方式で育てた方がよく売れるという現実があります。つまり、私たち消費者にも責任の一端があるかもしれません。
WHOは抗生物質の病気の治療目的以外の利用をやめるように警告しています。この動きを受け世界最大手のハンバーガーチェーンでも2016年、抗生物質で育てた鶏肉の使用中止をアメリカ国内で段階的に進めていく、と発表がありました。
私たちの毎日の食材はどうでしょうか。有機農法などで丁寧に育てた食材は、スーパーなどで見比べても割高な価格が多いようです。でも、その価格には理由があることを理解したいですね。
【参考文献】
- 農林水産省ホームページ
- 厚生労働省検疫所ホームページ