年々、上昇しつづける日本の医療費。医療費が増えると家計の負担が大きくなるとともに、国の負担も大きくなるという問題があります。では、そもそも医療費が増えている背景にはどんな理由があるのでしょうか?また、医療費の負担が増えてしまったとき、もしくは医療費を増やさないためにはどうしたらいいのでしょうか。
国民の医療費は右肩上がり!どうするニッポン
厚生労働省が発表した『平成25年度 国民医療費の概況』 によると、2013年度に使われた医療費は40兆610億円だったそうです。これは、前年度より8493億円(2.2%)多く、7年連続で増えていることになります。
医療費が年々、増加傾向にある理由としてあげられるのが、高齢化と医療技術の高度化です。今後、わが国の高齢化はますます進むと考えられています。国立社会保障・人口問題研究所によると、2030年には75歳以上の後期高齢者が2,266万人になると推計されており、これは現在の2倍に当たる人数です。医療費は年齢が高くなるにつれて増加する傾向にあります。実際に医療費を高齢者とそれ以外の世代で分けると、1人あたりの高齢者の医療費はそれ以外の層の約5倍になっています。
また、医療技術の高度化も医療費負担を大きくする理由の1つです。高度な医療が提供される安心感がある一方で、それだけお金もかかってしまうというのも事実です。
国が考える医療費対策で国民の負担はますます重くなる?
実は医療費の約4割は税金でまかなわれているため、医療費が増えれば増えるだけ国の財政を圧迫することになります。
朝日新聞によると、人口ボリュームの大きい団塊世代が後期高齢者の75歳以上になる2025年には保険と税金だけで54兆円になると推計されており、医療費を抑制することが、わが国にとっても必要不可欠なのです。
こうした状況に対して、政府も対策を練っています。抑制策としていくつかの案が示されており、
- ジェネリック医薬品の利用拡大
- 現在の負担額に定額負担を加えて窓口での負担を増額
- 医療保険の対象となる薬を減らすなど、保険の範囲の縮小
- 75歳以上の高齢者の負担引上げ
などがあります。
これらはまだ案でしかありませんが、国全体の医療費負担を抑制する代わりに、利用者である国民の負担が増える可能性があるため、今後は、私たち自身が医療費と上手に付き合っていく必要があるといえます。
確定申告の医療費控除を上手に利用しよう
医療費が多額になったときに利用したい制度として、確定申告の医療費控除があります。これは、本人あるいは生計を1つにする家族が1年間に支払った医療費が10万円(もしくは総所得の5%いずれか低いほう)以上だった場合、還付金が受け取れるというもの。ただし、保険金等で補てんされた金額は差し引かなくてはなりません。出産育児一時金や高額療養費、生命保険や損害保険の支払保険金などがそれに当たります。
早速、医療費がどれくらいかかったか計算してみようと思った人もいるのではないでしょうか。とはいえ、医療費控除には対象になるものとならないものがあるため、以下にまとめてみました。
医療費控除の対象になるもの
- 病気の治療費、薬代
- ドラックストアで購入した市販の風薬など
- 入院の部屋代や食事の費用
- 妊娠期間中の定期健診や検査費用
- 出産にかかった入院費
- 病院までの交通費
- 子どもの歯科矯正治療費
- 在宅で介護保険を使ったときの介護費用
医療費控除の対象にならないもの
- 病気が発見されなかったときの健康診断費用
- 自分の都合で利用した差額ベッド代
- 健康を保つためのサプリメント費用
- 病院まで自家用車で行ったときの駐車場代やガソリン代
- 里帰り出産のための交通費
- 美容を目的とした治療費
医療費控除を受けるためには領収書やレシートが必要です。交通費などはいくらかかったかをノートなどにまとめておき、証明できるようにしておきましょう。
「健康寿命」を伸ばすために大切なこととは?
ここまで医療費が増えてしまったときの対策を考えてきましたが、やはり私たちが健康を維持していくことが最も根本的な解決法です。わが国は平均寿命が長い「長寿大国」として知られていますが、今後の目標は「健康寿命」を伸ばすことだといわれています。健康寿命とは、認知症や寝たきりにならない状態でアクティブに生活できる期間のこと。つまり、健康寿命と平均寿命の差は、介護を必要とする期間となるわけです。
厚生労働省による『平成26年版 厚生労働白書』によると、日本人の平均寿命と健康寿命は、
【男性】 平均寿命: 79歳 健康寿命: 70歳
【女性】 平均寿命: 86歳 健康寿命: 74歳
と言われていますから、男性で約9年間、女性で約12年間も介護を必要とする生活を送ることになります。
介護が必要となる主たる原因のひとつとして、関節疾患とそれに付随する転倒・骨折があげられます。これを防ぐためには、若いうちから運動の習慣をつけることが大切です。なぜなら、骨や筋肉量のピークは20~30代といわれており、この時期に運動で刺激を与え、適切な栄養を摂ることが十分な筋肉や骨をつくることにつながるからです。
また、やせすぎや肥満もよくありません。やせすぎると筋肉や骨が弱くなってしまいますし、肥満だとひざの軟骨などに負担がかかってしまいます。
運動器を丈夫に保つためにも、健康的な体型を保つためにも食生活が重要になってきます。そのためにもバランスのよい食事を心がけることが大切です。忙しいときの栄養補助にサプリメントを利用するのもよいでしょう。医療費を大きくしないために、日頃の生活習慣から改善する必要性があるといえるでしょう。
【参考文献】
厚生労働省 『平成26年版 厚生労働白書』
厚生労働省『平成25年度 国民医療費の概況』- NHK
- 内閣府『平成27年盤高齢社会白書(概要版)』