「乳酸菌が含まれる食品」といわれると、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。「乳」の文字から乳製品をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実は乳酸菌は、身の回りのさまざまな食品に含まれているのです。普段の食事において乳酸菌を上手に摂取すれば、スッキリをサポートすることができます。スッキリ以外にも、健康維持をサポートする乳酸菌の有用性はたくさん。この記事では、いつもの食事で取り入れられる乳酸菌が含まれる食品について紹介していきます。
東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医科大学病院 消化器内科、東京医科大学病院 内視鏡センター助教、牧野記念病院 内科を経て、2015年より東京国際クリニック/医科 副院長を務める。
乳酸菌が含まれる食品は?(一覧表)
乳酸菌が含まれる食品には、以下のようなものが挙げられます。ヨーグルトは代表的なものですが、辛みのあるキムチや調味料である味噌を意外に感じる方も多いのではないでしょうか。
穀物加工食品 | 味噌、納豆 |
魚類加工食品 | 塩辛、なれ寿司、 |
野菜加工食品 | 漬物(ぬか漬け)、キムチ、ザーサイ、メンマ |
酪農加工品 | ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料 |
酒類 | 日本酒 |
乳酸菌とは、食物に含まれる「糖」を分解させ、発酵させる微生物。これらの食品の製造工程にも、乳酸菌が深く関係しています。なかでも代表的な食品についてチェックしていきましょう。
ヨーグルト
ヨーグルトは、牛乳に含まれる「乳糖」を乳酸菌が分解することでできあがります。乳酸菌とひと口にいってもその種類はさまざま。ヨーグルトの製造に必要な乳酸菌は、ブルガリア菌やサーモフィルス菌、ガセリ菌などです。ドリンクタイプの乳酸菌飲料には、カゼイ菌などが使用されています。
ヨーグルト製造の要となるのは、これらの菌の組み合わせと発酵温度です。ヨーグルトの発酵には、30~35℃の温かい環境が適しています。近年は乳酸菌の研究が進み、乳酸菌を添加して販売されているのはご存じでしょう。そのなかでも、腸内細菌をサポートし、健康に有益な働きをする微生物や食品は「プロバイオティクス」と呼ばれています。
ヨーグルト中の乳酸菌の働きは実にさまざまです。スッキリのサポートは、その代表的なものでしょう。そのほか、食事をサポートしたり体を守ったりなど、多くの有用性が確認されています。
チーズ
牛や山羊、羊の乳を原料とするチーズもまた、乳酸菌を多く含む食品です。乳酸の発酵により酸化させた後に加熱したり、酵素を添加して凝固させたりしてできあがります。家畜の乳を原料としたチーズは、古くから伝わる保存食です。用いる菌や熟成期間によって、さまざまな味わいや硬さに仕上がるのが特徴といえます。
チーズの中でも、豊富な乳酸菌を含むと考えられるのが「ナチュラルチーズ」。ナチュラルチーズは、生乳を乳酸菌や酵素で凝固させ、ホエイ(乳清)の一部を除去したものです。つまり、生乳と乳酸菌そのものがぎゅっと詰まったチーズといえるでしょう。
製品によってばらつきはあるものの、ナチュラルチーズ1gあたりの乳酸菌は約1,000万個です。これは、ヨーグルトの成分規格とほぼ同程度の含有量だと考えられます。
ちなみに、「プロセスチーズ」と呼ばれるものには乳酸菌が含まれていないことを覚えておきましょう。プロセスチーズは、チーズを加熱して溶かすことで発酵を止めたものです。そのため、加熱の段階で乳酸菌が消滅することになり、長期保存には適しているものの、乳酸菌の摂取にはそれほど期待ができません。
キムチ
キムチは、白菜に塩や唐辛子、ニンニクや魚介塩辛を加えて乳酸発酵させた漬物です。キムチの酸味や旨味は、乳酸菌の発酵によって生まれます。
本場韓国で作られるキムチの最大の特徴は、魚介塩辛を用いること。塩だけではなく、魚介塩辛を入れることで乳酸菌による発酵が促進されます。発酵中はガスが発生し、室温で保存すると容器が破損するといわれるほどです。
キムチを摂取することで期待できるのは、乳酸菌による腸内菌のサポート効果でしょう。唐辛子を使用しているため、カプサイシンによる健康維持効果も期待できます。ただし、キムチには塩分も大量に含まれているため、くれぐれも食べすぎには注意しましょう。
ぬか漬け
キムチが韓国古来の味とするならば、ぬか漬けは日本古来のおふくろの味といったところでしょうか。毎日かき混ぜて野菜を漬ける「ぬか床」には、豊富な乳酸菌が存在します。
市場に出回っている漬物の中には、保存効果を高めるために微生物が増殖しないよう工夫されたものも多々あります。一方で、近年の発酵食品ブームで注目を集めているのがぬか床を使用した「ぬか漬け」です。
ぬか床は、米ぬかに塩と水を練り合わせて作ります。そこに野菜を漬け込むことで、乳酸菌による発酵が進み、独特の味と香りが生まれていくのです。
漬物由来の乳酸菌には、スッキリの有用性以外にも顔の美容効果が確認されています。漬け込む野菜を変えることで味のバリエーションも広がるため、飽きることなく日々取り込める乳酸菌であるといえるでしょう。
味噌
ぬか漬けと同様に、味噌も古くから日本で親しまれている食品です。さまざまな具材で楽しめる味噌汁は、郷土色現れる和食の代表格でもあるでしょう。
味噌は、大豆や米こうじ、塩を原料として作られます。発酵の段階で生まれるのが酵母や乳酸菌です。乳酸菌は味噌のPH値を下げ、酵母が生成しやすい環境を生み出します。さらに、味を変化させたり色を向上させたりするなど、さまざまな役割を持つのです。
味噌を摂取することは、乳酸菌以外にも大豆由来の栄養素を摂り入れることへとつながります。なかでも代表的な栄養素といえば、良質なタンパク質です。そのほか、脂質やビタミン、ミネラルなどを豊富に含み、栄養価が高いのが特徴といえます。
日本酒
日本酒は、米と米こうじ、水を原料に作られるお酒です。それらをアルコール発酵させるためには、酵母が必要となります。酵母を培養する素となるのが「酒母」(しゅぼ)です。
酒母は酸性化する必要があり、そのためには乳酸菌が使われます。液体を直接添加させるほか、自然の乳酸菌を育成する方法が生(きもと)系酒母といわれるもの。ゆっくりと時間をかけて乳酸菌を育てるのは、手間も技術も必要な方法です。
こうしてできあがった日本酒は酸度が高く、濃醇な味わいに仕上がります。近年は飲用する以外にも、食品や化粧品として日本酒の乳酸菌は認知度を広めています。
乳酸菌と発酵食品
ここまで紹介したとおり、乳酸菌が含まれる食品はすべて「発酵食品」です。乳酸菌がどのような糖を分解するかによって、できあがる発酵食品は異なります。ここでは、乳酸菌と発酵食品の関係について着目してみましょう。
発酵で生まれる乳製品
動物の乳に含まれる「乳糖」を乳酸菌が分解すると、ヨーグルトやチーズといった乳製品が生まれます。乳製品を発酵させた食品の特徴は、動物性由来の乳酸菌が含まれていることです。
生乳を原料とした乳製品は、動物性乳酸菌のほかにもタンパク質やカルシウムといった栄養素が豊富。普段の食事にプラスするだけで、必要な栄養素を補給できるというメリットがあります。子どもでも食べやすいものが多く、成長期も手軽に栄養を摂取することが可能です。
日本古来の調味料も
醤油や味噌、酢にみりん、どれも家庭に常備することの多い身近な調味料ですよね。実はこれらも全て発酵食品なのです。発酵には乳酸菌が関係しています。
これらの調味料が生まれた背景には、冷蔵庫や保存料がなかった時代、食品を保存する必要があったことが考えられます。特に、植物由来の原料から生まれる乳酸菌は、温度が低かったり、栄養素が少なかったりしても生息できるのが特徴。生きたまま腸内に到達し、善玉菌をサポートすると考えられます。
過去に保存を目的として誕生したこれらの調味料は、今では発酵食品として高い注目を集めているのです。「和食」がユネスコ無形文化財に登録されたことからも、日本の発酵食品の素晴らしさをうかがい知ることができるでしょう。
食品から乳酸菌を摂取するときの注意点
「乳酸菌は体に良いことがたくさん」、「食事で乳酸菌をたくさん摂取するぞ!」と思われた方は、少々お待ちください。確かに乳酸菌はスッキリをサポートし、さまざま有用性をもたらす細菌です。しかし、食品から摂取する場合には、以下の点に注意する必要があります。
乳酸菌の「エサ」をプラスして有用性アップ
菌には、「プレバイオティクス」と呼ばれる善玉菌を増殖する働きを持つものが存在します。食物から乳酸菌を摂取するときには、このプレバイオティクスを一緒に摂るように心がけてみましょう。
プレバイオティクスが存在する食品成分は、食物繊維やオリゴ糖など。食物繊維は、以下の食品に豊富に含まれています。
・野菜(ゴボウ、ニンジン、ブロッコリー、ホウレンソウなど)
・豆類(納豆)
・いも類(里芋、こんにゃく)
・その他(海藻、きのこ、果物など)
乳酸菌を発酵させたキムチと食物繊維を含む納豆で作るキムチ納豆、海藻入りのお味噌汁、根菜の煮物と日本酒などは、相性がいい組み合わせですね。
また、オリゴ糖は以下の食品に豊富に含まれています。
・野菜(タマネギ、ゴボウ、ニンニク、アスパラガスなど)
・果物(バナナ)
・豆類(大豆)
ここで考えられるのは、ビフィズス菌や乳酸菌が豊富なヨーグルトとバナナの組み合わせ。タマネギやゴボウを加えたお味噌汁も、乳酸菌とプレバイオティクスのそれぞれの有用性をアップさせるメニューです。
オリゴ糖は、市販のオリゴ糖製品でも摂取することができます。ただし、オリゴ糖を急に摂取すると、お腹が不調になるケースもあるため注意が必要です。その場合は、1度に摂取する量を調整しながら、徐々に体に慣らしていきましょう。
食品の食べ過ぎに気を付ける
食品から乳酸菌を摂取する場合には、食品に含まれるほかの栄養素にも気を配る必要があります。例えば、代表格のヨーグルトには、乳酸菌だけではなく脂質や糖質が含まれている場合があります。これらを適量摂取する分には問題ありませんが、乳酸菌のためにと大量に摂取しないように注意しなければなりません。これらの栄養素が気になる場合には、無脂肪や無糖の商品を選択するのがよいでしょう。
また、発酵食品であるキムチや味噌には、保存のために塩が使用されています。食べ過ぎてしまうと塩分過多となってしまうため、こちらも注意が必要です。
日本酒は、いうまでもなく飲みすぎると体に悪影響を及ぼします。「酒は百薬の長」といえるのは、あくまでも適量を守った上でのことです。
腸内環境のバランスを良好に保つためには、食生活のバランスが整っていることが重要。さらに、適度な運動を取り入れながら生活習慣を改善していきましょう。
毎日継続的に摂取する
乳酸菌には、タンパク質や脂質のように「一日の摂取量の目安」が規定されていません。それは、たとえ大量に摂取したとしても、体内に蓄積されることなく排出されていくからです。
つまり、乳酸菌は一度に大量摂取するのではなく、毎日こつこつと摂り続けることが大切。そのためには、自分が継続しやすい食品を選択する必要があります。調理に手間がかからず、手軽に摂取できることもポイントとなるでしょう。
(小見出し) 日々の摂取には乳酸菌サプリメントも効果的
※医師監修対象外です。
毎日適量の乳酸菌を摂取するためには、乳酸菌を含むサプリメントも効果的です。食品の栄養バランスを偏らせることなく、手軽に乳酸菌を摂取できます。
「ニュートリプロバイオ」は、生きたまま腸内に乳酸菌を配合したサプリメントです。さらに、乳酸菌が腸内に定着し、発酵しながら善玉菌を増やしていきます。配合されているのは、5種類の乳酸菌とビフィズス菌です。1本あたり、63億個の善玉菌が含まれています。
摂取量の目安は1日1本であるため、手軽に継続できるのもポイントでしょう。腸内にとどまった善玉菌が腸内細菌のバランスをサポートし、体を内側から健康維持をサポートします。
また、「ニュートリノバイオプラス」は、鼻腔に着目した乳酸菌サプリメントです。腸活に加え、鼻腔の細菌バランスに着目し厳選した乳酸菌とビフィズス菌が配合されています。1本あたりに含まれる善玉菌はおよそ100億個。こちらも1日1本が摂取量の目安となるため、日々の生活に無理なく取り入れることができますね。
旨味と栄養素をプラス!乳酸菌は発酵食品の立役者
乳酸菌は、食品の発酵に欠かすことのできない細菌です。食品の長期保存が可能になるだけではなく、発酵食品ならではの旨味や香りを引き出してくれます。さらには、食事に取り入れることで、腸内菌をサポートしてくれることも大きなポイント。おいしく、そして体にうれしい食品として注目を集めているのです。取り入れやすい食品を上手に選びながら、毎日の菌活へと活かしてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- http://www.kyuchan.co.jp/labs/article/document/article01.pdf
- http://www.yeast.umin.jp/yeast-symposium21/abstract21-24.pdf
- 植物性乳酸菌と動物性乳酸菌はどう違うのですか?
- キムチ - Wikipedia
- チーズ - Wikipedia
- 発酵食品 - Wikipedia
- 乳酸菌 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています:農林水産省
- ニュートリ プロバイオ - ベースのサプリメント | ニュートリライト(Nutrilite)
- チーズの中に生きた乳酸菌はどのくらいいるのですか? | 乳と乳製品のQ&A | 一般社団法人日本乳業協会
- 乳酸菌とはどのような菌ですか? | 乳と乳製品のQ&A | 一般社団法人日本乳業協会
- みそと乳酸菌| 神州一味噌 コーポレートサイト