乳酸菌が身体に良いことはわかっていても、殺菌乳酸菌にどのような有用性があるのかをよくわかっていない方も多いのではないでしょうか。そもそも殺菌乳酸菌とはどのようなものなのか、何のために乳酸菌を殺菌するのか、その意味を知らない方も多いことでしょう。
そこで今回は、殺菌乳酸菌の持つ意味や有用性、プロバイオティクスとの違いや殺菌乳酸菌が含まれている食品についてまとめて解説します。殺菌乳酸菌の特徴を知り、日々の健康に役立てましょう。
ビューティーコネクション銀座クリニック院長
専門は美容皮膚科、腎臓内科、内科。東京女子医科大学卒業。大学病院、都内総合病院勤務を経て2017年都内美容クリニック院長に就任。2020年よりビューティーコネクション銀座クリニック院長就任。
殺菌乳酸菌とは
殺菌乳酸菌とは、乳酸菌を加熱殺菌処理して加工した乳酸菌のことです。食品から摂取した菌は、大腸に届く前に胃酸や胆汁などの消化液の殺菌力を受けてほとんどが死滅します。これが殺菌乳酸菌です。死滅した菌は「死菌」とも呼ばれます。乳酸菌は75℃以上で15分間加熱、もしくはこれと同等以上でほとんど死滅します。
ただし、生きた乳酸菌を腸に届けるための技術も開発されてきており、その技術を用いたサプリメントも販売されております。こちらは後述します。
生きた乳酸菌プロバイオティクスとの違い
生きた乳酸菌と殺菌乳酸菌には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは生きた乳酸菌「プロバイオティクス」の意味や有用性を解説するとともに、殺菌乳酸菌との違いを紹介します。
プロバイオティクスとは
プロバイオティクスとは、人の健康に有益な作用をもたらす微生物のこと、もしくはそれを含む食品のことを指します。
プロバイオティクスは、イギリスの微生物学者フラー博士によって1989年に初めて定義づけられました。その後、細かな定義の変更を経て、現在は国連で採択された「適正な量を摂取したときに有用な有用性をもたらす生きた微生物」が定義の主流になっています。
プロバイオティクスの代表的なものは乳酸菌です。乳酸菌にはさまざまな種類がありますが、そのすべてがプロバイオティクスとして扱われているわけではありません。プロバイオティクスと呼ばれるには、以下の条件を満たす必要があります。
- ● 誰もが摂取しても安全であること
- ● 生きて腸に到達する菌であること
- ● 確かな有用性を発揮すること
人に無害であり、胃液や胆汁で死なずに腸で有用性を発揮できる菌、そして信頼できる試験で有用性が証明されている菌がプロバイオティクスなのです。
ヨーグルトに入っている乳酸菌の多くは胃酸などの体内消化液により死んでしまうため、生きたまま腸には届きません。一方、ガセリ菌やビフィズス菌などの一部の乳酸菌は生きたまま腸まで届き、腸の中で有益な作用をもたらします。これら生きたまま大腸に届く発酵乳、乳酸菌飲料がプロバイオティクスなのです。
近年、乳酸菌の有用性が明らかになるにつれて、プロバイオティクスの有用性をうたう食品の注目度が高まっています。
プロバイオティクスがもたらす有用性
これまで多くの研究が進められた結果、プロバイオティクスは健康に対するさまざまな有用性を示すことがわかっています。近年は菌の種類や組み合わせによって、得られる有用性も違うことがわかってきました。
プロバイオティクスは、体全体の健康に欠かせないものです。現在もプロバイオティクスの研究は進められており、新たな健康に対する有用性が期待されています。プロバイオティクスの種類によってそれぞれ得られる有用性が異なるため、自分の体の悩みに合ったものを摂取すると良いでしょう。
プロバイオティクスのエサになるオリゴ糖や食物繊維も一緒に摂ると、さらに効果的です。ただし、食品から摂り入れた菌は腸内に長く滞在できません。短期間ですぐに排出されてしまうため、有用性を得るには毎日食べ続けることが大切です。
まずは2週間程度、同じ食品を継続的に摂取してみましょう。朝からスッキリを感じられれば、その食品に含まれている菌は自分に合うものだと分かります。
プロバイオティクスと殺菌乳酸菌の違い
プロバイオティクスは加工や体内の消化液などの影響で、その多くが小腸に届く前に死んでしまうというデメリットをもっています。保管するには冷蔵や冷凍が必要なので、手間もかかりがちです。しかし、生きた状態で腸まで届いた生菌は腸内で増えるため、身体環境のサポートに役立ちます。
一方、殺菌乳酸菌は熱や消化液に強いため、常温保存や長期保存が可能です。食品や飲料へ応用しやすいので、プロバイオティクスよりも扱いやすい利点があります。また、プロバイオティクスのように胃酸や腸液の影響を受けないため、安定して腸まで到達できるのもメリットです。ただし、腸内で数が増えることはないので、有用性を得るには大量の菌数を摂らなければなりません。
プロバイオティクスが活用されている食品やサプリ
身体の健康を促進するには、腸内で増えるプロバイオティクスの摂取がおすすめです。
毎日の食事で摂るのは大変と思うかもしれません。しかし実際には、わたしたちの身近な発酵食品に生きた乳酸菌が含まれているのです。
その身近な発酵食品とは、味噌や醤油、漬けものなどの日本古来の発酵食品です。これらの発酵食品には生きた乳酸菌が含まれています。発酵食品を毎日の食事に取り入れれば、生きた乳酸菌がもつ健康に対する有用性を得ることができるのです。
発酵食品に用いられる微生物は、数分から数時間の短いスパンで一生を終えます。新しい菌と入れ替わった死菌は、発酵食品中にどんどん蓄積していきます。発酵期間が長い伝統的な発酵食品ほど健康に良いとされる理由は、微生物の働きをよるところが大きいのです。発酵食品を毎日の食事に摂り入れれば効率よく身体環境をサポートでき、健康に対する有用性も促進されます。
発酵食品を毎日食べ続けるのが難しい場合は、サプリメントを活用してみましょう。サプリメントならば料理する手間がかからず、毎日手軽に摂取できます。サプリメントにもさまざまな種類があるので、自分の身体に合うものを探してみましょう。
プロバイオティクスを積極的に摂取しよう
今回は殺菌乳酸菌の意味やプロバイオティクスとの違いを解説しました。
殺菌乳酸菌にも一定の健康に対する有用性を期待できますが、腸内で増える生きた菌を摂り入れることをおすすめします。
プロバイオティクスは味噌や醤油など、身近な調味料や食品に含まれています。普段の食事に上手に摂り入れ、身体環境の健康を維持しましょう。
【参考文献】
- 私たち人間の味方!乳酸菌を知ろう2 – めいらく調査隊が行く!知って得する食と健康コラム
- 蔵華乳酸菌 | 知る・楽しむ | イチビキ 公式サイト | 名古屋のみそ・しょうゆ・つゆメーカー
- 感染症の備えに免疫力[栄養補給と乳酸菌Q&A] | ニュートリー株式会社
- 健腸長寿⑥:「プロバイオティクス」って何? | ヤクルト健康コラム | ヤクルト中央研究所
- プロバイオティクス(probiotics)|用語集|腸内細菌学会
- 「プロバイオティクス」で体質改善 - 吉岡医院|京都市上京区の内科・婦人科・小児科・消化器内科・一般外科・肛門外科
- 乳酸菌は死んでも効果はあるのでしょうか? | 乳と乳製品のQ&A | 一般社団法人日本乳業協会
- 生物工学会誌 第97巻 第7号 続・生物工学基礎講座―バイオよもやま話―