お腹が張って不快な便停滞。その原因はさまざまなものが考えられますが、ダイエット中は特に便通不良になりやすいと言われています。体重を落としたいのに便停滞のせいで出るものが出ないなんてことは避けたいですよね。
ダイエット中になりやすい便通不良の原因やその解消法を知って、お腹の中からすっきり気持ちのいいダイエットをしましょう。
一般社団法人 日本ダイエットスペシャリスト協会理事長
健康運動指導士
生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値に着目し、低インシュリンダイエットを提唱。主な活動として、各健康保険組合・企業・各都道府県での講演活動、雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などの取材も多数受けている。
◆一般社団法人 日本ダイエットスペシャリスト協会 公式ホームページ:https://jdsa.co.jp/
ダイエット中は便通不良になりやすい?
ダイエット中は食事量を制限しがちです。口から入る食べ物の量が少ないということは、それだけ便の嵩(かさ)も減るということです。便意は便が直腸に到達して神経を刺激することで感じるものなので、作られる便の量が少ないとそれだけ刺激が少なくなります。また、次に作られる便の量が少ないと、押し出そうとする力も弱くなるため、スムーズな排便が促されにくいということもあります。
その他、水分不足も考えられます。飲み物だけでなく、食べ物に含まれている水分も多く、私たちはふだんの食事からも思った以上に水分を取り入れているのです。そのため、飲み物の量は変わらなくても、食事量が減ることで摂取している水分量は減ってしまうことで便が固くなり、排便しにくくなります。これもダイエットによる便通不良の原因と考えられます。
便滞留になるリスク
便通不良はお腹の張りなどの不快感だけでなく、健康や体調に影響を及ぼすことがあります。便が停滞するリスクについて紹介します。
体の不調につながる
体に不要なもの、有害なものを体外に排出する仕組みのひとつが排便です。便通不良によって長い時間便が腸にとどまることは、つまり便に含まれる有害なものも腸内にとどまっていることになります。有害なものを腸壁の血管が再吸収してしまうと、さまざまな不調になって表れてくるのです。
その代表的な症状が身体の冷えであり、月経時の痛みも便の滞りが原因になることがあると言われています。
肌トラブルが増える
腸内に有害物質が蓄積されると、肌トラブルの原因にもなります。アンモニアやアミンなど、腸内で生成された有害物質は、毛細血管を通って全身をまわり、やがて皮脂や汗にまぎれて皮膚から排出されます。
つまり、便通不良を放置していると、腸内の有害物質の影響が皮膚にまで及んでしまうのです。せっかくダイエットできれいになろうと思ったのに、お肌が荒れてしまっては悲しいですね。
お腹ぽっこりの原因になる
ひどい便通不良になると、腸に便がたまっているせいで、下腹がぽっこりと出てしまいます。また、悪玉菌が腸内の食べかすを腐敗させることにより、ガスがたまってお腹が張ったような感覚になることもあるでしょう。
ダイエット中であれば、なおさらそのような状態は避けたいところです。
イライラしやすくなる
便通不良の状態が続くと、「出ない!」というストレスからイライラを感じやすくなる方も少なくありません。ストレスは、ダイエットや美容の大敵。
特に、ストレス解消の方法として暴飲暴食しがちな方は、便通不良によるストレスによって食べる量が増え、ダイエットを挫折してしまう原因にもなります。
脂肪を溜め込みやすくなる
腸内物質は悪臭やガスだけでなく、私たちの体に有益なものも生成します。そのひとつが、腸内物質の働きによってつくられる「短鎖脂肪酸」です。短鎖脂肪酸はエネルギーの代謝機能に関与しており、脂肪の蓄積を抑える働きを期待できるとされています。
つまり、便通不良によって腸内のバランスが乱れると、脂肪を溜め込みやすくなってしまう恐れがあるのです。せっかくダイエットを頑張っても、脂肪を溜め込みやすい体になってしまっては成果が出にくくなります。健康的な体を目指すためにも、ダイエット中の便通不良はできるだけ防ぎましょう。
ダイエットのカギは菌活にあり!おすすめの便通対策
腸内のバランスは、ダイエットや便通とも関係があります。
菌活とは
菌活とは、腸内バランスをサポートする物質を摂取する取り組みです。心や体を健康的に保つことにより、スッキリした生活を目指せます。菌活に取り組む際に意識的に摂りたい物質が、食物繊維です。腸内物質の働きを助けるため、発酵食品だけを摂る菌活よりもさらに高い効果が期待できます。
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。以下のような食品に多く含まれていて、どちらもバランス良く摂ることが大切です。
【水溶性食物繊維を多く含む食品】
バナナ、大麦、かぼちゃ、納豆、トマト、キウイフルーツなど
【不溶性食物繊維を多く含む食品】
きくらげ、干ししいたけ、切り干し大根、さつまいも、ごぼうなど
食物繊維を摂ったうえで、菌活を含めた便通対策に取り組んでみましょう。おすすめの方法を5つ紹介します。
発酵食品を摂取する
納豆やヨーグルトなどの発酵食品には、有用な腸内物質が含まれています。日々の食事にプラスすることで腸内のバランスをサポートし、ダイエットや菌活に良い効果を期待できるでしょう。
バランスの良い食事を心がける
ダイエット中は、食事の量を減らしがちです。しかし、食事の量が極端に減ると、菌活に欠かせない栄養素が不足しやすくなってしまいます。
たとえば脂質を過度に控えると、便のすべりが悪くなり、便が出にくくなる原因となります。「脂質はダイエットの大敵」と思われがちですが、私たちの体にとって欠かせない栄養素のひとつです。また、近年は糖質制限ダイエットが流行っていますが、糖質の多いお米や小麦粉、根菜類などを過度に避けると、食物繊維が不足してしまう恐れがあります。食物繊維は有用物質の働きをサポートするため、菌活で積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
便通対策をしながら健康的に痩せるためにも、バランスの良い食事を心がけましょう。
水分補給を欠かさない
水分の摂取量が少ないと便がカチカチになり、排便がスムーズにいかなくなってしまいます。職場や学校にマイボトルを持参したり、休憩時間ごとに飲み物を用意したりと、水分を意識的に摂取しましょう。
特に、朝起きた時にコップ1杯の水や白湯を飲むのがおすすめです。お腹に水分を入れることで、腸を目覚めさせることができます。
食事のリズムを整える
便通対策をするためには、食事のリズムを整えることも大切です。1日3食規則正しく食事を取ると、腸が働くリズムが整い、体に良い効果を期待できます。
反対に、昼食や朝食を抜く習慣があると、便滞留のリスクが高まる原因になるかもしれません。食事の時間から逆算して予定を立てるなど、毎日同じ時間に食事を摂れるよう工夫してみましょう。
適度な運動、マッサージ
便通不良は運動不足によっても起こることがあるため、散歩やウォーキングなど、適度な運動を習慣化するのもよいでしょう。
「運動している時間がない」、「体の負担が気になる」という方には、お腹の摩りやもみほぐしがおすすめです。手や、お腹を温めてから、腸のあたりを優しくゆっくりとほぐしてあげましょう。
※妊娠中や産後間もない方、胆石や腎結石、腹部の炎症、ヘルニアなどの症状または疑いがある方は、必ず医師と相談の上行ってください。
まとめ
【参考文献】
- 講談社「ひどい便秘の治し方」松尾恒夫 監修
- 秀和システム「よくわかる便秘と腸の基本としくみ」坂井正宙
- マキノ出版「「排便力」が身につく本」松尾恒夫
- 健康長寿ネット 生活習慣で乱れた腸内環境を整える方法
- 健康長寿ネット 健康寿命と排泄の関連について
- JT生命誌研究館 腸内細菌と宿主の肥満をつなぐ受容体
- 大正製薬 便秘薬の種類と選び方