菌活にはヨーグルトが有用です。菌活とは腸内の善玉菌を増やして腸内細菌バランスを整え、腸が持つ本来の力を取り戻すことであり、健康増進が期待できます。善玉菌を増やす食べ物として人気が高いのがヨーグルトで、手軽に摂れることが魅力です。
本記事ではヨーグルトが菌活に良い理由や選び方、菌活に有用性のある摂り方などを紹介します。
皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士 日本皮膚科学会専門医 日本抗加齢医学会専門医。
「体の内外から美しくなれるクリニック」をコンセプトに一般皮膚科診療だけでなく、美容医療、頭髪治療なども行っている。またweb雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修などでも、多方面に活躍の場を広げている。
菌活とは?
菌活にヨーグルトが有用なことを紹介する前提として、そもそも菌活とは何かを簡単に見ていきましょう。
腸内細菌バランスを整えること
菌活とは腸内細菌バランスを整え、健康維持や増進を図ることです。腸内には1,000種類、100兆個以上の細菌が生息しており、その中でも健康維持に貢献する善玉菌を増やすことが菌活に欠かせません。
腸内の細菌には、体に良い影響のある善玉菌と悪い影響を与える悪玉菌、どちらでもない日和見菌の3種類があります。腸内細菌バランスを整えるには、このうちの善玉菌が優位にある状態が必要です。
善玉菌を増やすには乳酸菌を多く含む食べ物を摂ることが有用で、特にヨーグルトが最適です。
菌活をしない場合に起こること
菌活にはバランスのよい食事や適度な運動が必要ですが、食生活や生活習慣の乱れによって腸内の活動が乱れると、肌荒れや便秘などの不調が現れます。
腸には免疫細胞の約70%が集まっており、腸内細菌バランスが乱れると免疫力の低下を引き起こしやすくなるでしょう。体の抵抗力がなくなり、病気になりやすい体質になってしまいます。
そのため、毎日健康に過ごすためには、菌活を行うことが大切です。
菌活にヨーグルトがおすすめな理由
菌活にはヨーグルトがおすすめです。ヨーグルトは生乳に乳酸菌などを加えて発酵させて作られ、善玉菌の代表である乳酸菌やビフィズス菌が豊富に含まれています。
菌活にヨーグルトがおすすめな理由をお伝えしましょう。
効率的に菌活ができる
ヨーグルトには善玉菌を増やす乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が豊富に含まれており、摂取することで効率的に菌活ができます。ただ食べるだけで腸内の善玉菌を増やし、腸内の細菌バランスを整える有用性が期待できるのです。
乳酸菌は炭水化物などの糖を分解して乳酸などを作る細菌で、悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内を整える働きをします。また、ビフィズス菌にも乳酸菌と同じ有用性があるとされています。
手軽に毎日摂れる
ヨーグルトがおすすめな理由は、手軽に毎日摂れるという点です。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は腸内で3日ほどしか生きられず、有用性を維持するには、毎日摂り続けなければなりません。
乳酸菌を含む食品にはヨーグルト以外にも味噌や醤油、ぬか漬け、キムチ、チーズなどがありますが、毎日気軽に摂取できる点ではヨーグルトが便利です。
ヨーグルトならばスーパーやコンビニで手軽に購入でき、そのまま食べられます。種類も多く、飽きずに食べられるのもメリットです。飲むタイプもあり、より手軽に菌活ができます。
様々な有用性がある菌を選べる
ヨーグルトに含まれる菌には、乳酸菌をはじめビフィズス菌やLB81乳酸菌、LG21乳酸菌などさまざまな種類があるのもおすすめ理由です。それぞれ違った働きをするため、求める有用性によって選べます。
ビフィズス菌には基本的に乳酸菌と同じ有用性があります。LB81乳酸菌は、腸のバリア機能を高めて病原菌や有害物質などの攻撃から体を守り、LG21乳酸菌は胃酸に比較的強く、胃での増殖性が高いとされています。
ヨーグルトの選び方
ヨーグルトは種類が多く、菌活に有用性を発揮するためには選び方を考える必要があります。毎日食べるには味や価格も大切ですが、菌活を考えた選び方も重要です。
また、ヨーグルトには菌活以外にもさまざまな有用性があり、期待したい有用性がある場合はそちらも合わせて選ぶ基準にするとよいでしょう。
ここでは、菌活に有用なヨーグルトの選び方を紹介します。
自分に合う菌で選ぶ
ヨーグルトに含まれる菌にはさまざまな種類があることを前述しましたが、商品ごとに菌が異なるため、自分に合う菌のヨーグルトを選ぶことが大切です。
まず、乳酸菌とビフィズス菌は同じ善玉菌でありながら、菌としてはまったく異なります。乳酸菌は、栄養分の吸収や輸送の働きをする小腸に生息する細菌です。
これに対してビフィズス菌は大腸に生息し、乳酸のほかに酢酸を作る役割をもっています。
大腸と小腸の環境を整えるためには、乳酸菌とビフィズス菌を両方摂取できるヨーグルトを選ぶとよいでしょう。
ただし、ビフィズス菌には酸素を嫌う性質があるため、含まれているヨーグルトが限られています。ビフィズス菌が含まれているヨーグルトを選ぶ際は、表示をよく確認してください。
また、どの細菌が自分の腸に合うかは、実際に食べてみないとわからない部分があります。よいと思ったヨーグルトを見つけたならば、一度試してみるとよいでしょう。
方法としては、1種類のヨーグルトを2週間ほど続けて食べることです。よい変化を感じたら、自分に合っていると思ってよいでしょう。何も変化がない場合は、ほかのヨーグルトを同じように2週間摂取してみてください。
効能で選ぶ
ヨーグルトに含まれている細菌は善玉菌を増やし、菌活に有用です。それ以外にも、細菌の種類によってさまざまな効能があります。トクホや機能性表示食品として効能があげられているものは、主に以下のとおりです
● 食後尿酸値の上昇を抑制する
● 内臓脂肪を減らす
● 歯茎を丈夫で健康に保つ
● 口腔環境を良好に保つ
● 認知機能を維持する
● 骨密度を高める
● 花粉やホコリなどによる鼻の不快感を軽減する
菌活以外で期待したい効能がある場合は、選ぶ際の基準にするとよいでしょう。
容器・タイプで選ぶ
ヨーグルトを毎日食べるためには、ライフスタイルに合った容器やタイプを選ぶことも必要です。自分に合うヨーグルトが見つかったならば、大容量タイプで食べ続けるのが便利でコストパフォーマンスもよいでしょう。
飽きずに毎日違った味にしたい場合は、個食タイプを選んでください。場所を選ばずに手軽に摂りたい場合は、ドリンクタイプがおすすめです。
ヨーグルトの有用な食べ方
菌活の有用性を上げるには、ヨーグルトをただ食べるのではなく、食べ方の工夫も大切です。
乳酸菌やビフィズス菌など生きた善玉菌を含む食品をプロバイオティクスといいますが、そのほかに善玉菌のエサとなって菌活の有用性を発揮する食品があります。これをプレバイオティクスといい、食物繊維やオリゴ糖が代表的です。
そのため、ヨーグルトと一緒に食物繊維やオリゴ糖を摂取すると、ただヨーグルトだけを食べるよりも菌活に大きな有用性が期待できます。
ヨーグルトに合わせる食物繊維には、果物やナッツ類がおすすめです。食物繊維が多く、ヨーグルトのトッピングに合う果物にはバナナやりんご、キウイ、グレープフルーツなどがあります。
オリゴ糖が含まれている食材は、バナナやはちみつ、アボカド、たまねぎなどです。甘味料としても販売されているオリゴ糖を利用するのもよいでしょう。
これら食材を使ったおすすめのレシピを4つ紹介します。
1.キウイときな粉のヨーグルト
(材料2人分)
● プレーンヨーグルト:100~200ml
● きな粉:大さじ1
● キウイ:1個
● オリゴ糖またはハチミツ:大さじ1〜2
(作り方)
1. キウイの皮をむき、食べやすい厚さにスライスする
2. 器にプレーンヨーグルトを入れ、キウイをトッピングする
3. オリゴ糖をかけ、きな粉をのせる
きな粉も食物繊維が豊富なプレバイオティクスの食材です。果物はいちごやバナナなど、お好みでアレンジしてください。
2.りんごヨーグルト
(材料2人分)
● プレーンヨーグルト:100~200ml
● りんご:1/2個
● 牛乳:大さじ3
● オリゴ糖またはハチミツ:大さじ1〜2
(作り方)
1. りんごは半分に切り、種を取って皮をむいてすりおろす
2. 鍋にヨーグルト、牛乳を入れて温める(40度程度まで)
3. すりおろしたりんご、オリゴ糖を加えてよく混ぜる
4. 器に盛り付け、りんごをのせて完成
りんごは水溶性食物繊維のペクチンが豊富で、ヨーグルトと一緒に摂ることで高い菌活の有用性が期待できます。
ヨーグルトは温めすぎないように注意しましょう。乳酸菌は基本的に高温に弱く、約60度で死滅しますが、発酵温度の20〜45度前後で活性化するという特徴があります。少し温めることで菌活の有用性アップが期待でき、寒い日に冷たいヨーグルトが食べにくいという場合におすすめです。
ちなみに、温めすぎて乳酸菌が死滅しても、菌活の有用性がなくなるわけではありません。そもそも、乳酸菌には胃酸や胆汁の働きで腸に到達する前に死滅するものも多く、それでも善玉菌のエサになるなど菌活の有用性はあるとされています。製品の中には、殺菌した乳酸菌を使用しているものもあるほどです。
3.ナッツのせヨーグルト
(材料2人分)
● ヨーグルト:200g
● ナッツ(お好みで):40g
● キュウリ:1/2本
● グレープフルーツ:1/2個
● オリゴ糖またはハチミツ:大さじ1〜2
(作り方)
1. ナッツを荒く刻む
2. グレープフルーツを食べやすいサイズに切る
3. 器にヨーグルトとカットしたグレープフルーツを入れ、ナッツをのせる
4. 最後にオリゴ糖またはハチミツをかける
ナッツはくるみやアーモンドなど、好みのものを選んでトッピングしてください。果物も季節ごとに好きなものに変えて楽しみましょう。
4.トマトときゅうりのサラダ
(材料2人分)
● トマト:1/2個
● キュウリ:1/2本
● オリーブオイル:大さじ1/2程度
● ヨーグルト:大さじ2
● オリゴ糖またはハチミツ:小さじ1/2
● 塩・こしょう:適量
(作り方)
1. キュウリとトマトはヘタをとり、乱切りにする
2. ボウルにキュウリ、トマトを入れ、オリーブオイルをからませる
3. ヨーグルト、オリゴ糖、塩、こしょうを加える
ヨーグルトをそのまま食べるだけでなく、サラダにもアレンジできます。野菜との組み合わせで食物繊維もたくさん摂れるためおすすめです。
ヨーグルトはいつ食べるのがいい?
ヨーグルトは食べるタイミングで有用性が変わります。ベストタイミングを知り、菌活の有用性を高めましょう。
ヨーグルトを食べるのに良いタイミングを紹介します。
食後に食べる
ヨーグルトは食後に食べるのがおすすめです。
乳酸菌やビフィズス菌のプロバイオティクスとしての菌活有用性は、生きたまま腸に届くことで得られます。
しかし、これらの細菌は胃酸に弱く、腸に届く前に死滅してしまう場合もあります。できるだけ生きたまま腸に届けるため、胃酸が多くなりやすい空腹時を避けるほうがよいでしょう。
食後は胃の中にまだ食べ物があり、胃酸のpH値が中性に近い状態です。そのため、胃酸による刺激が弱く、乳酸菌やビフィズス菌が生きたまま腸に届きやすくなっています。
夜に食べる
また、ヨーグルトを食べる時間帯としては夜が理想的です。腸が最も活発に活動する時間帯は朝起きてから15〜19時間後とされており、朝7時に起床した場合、夜10時〜深夜2時ごろが活発ということになります。夕食後にヨーグルトを食べて早めに就寝することで、寝ている間に細菌が働いて菌活が高まるということです。
ただし、寝る直前にヨーグルトを食べるのは避けましょう。食後から時間が経って胃酸の影響を受けやすくなり、胃が動くことで睡眠の質も下げてしまいます。就寝の2時間前までには食べ終えるようにしてください。