腸内細菌バランスを整えて健康を保つ菌活は、飲み物によってより有用性を高められます。菌活に有用性のある飲み物には甘酒や飲むヨーグルト、スムージーなどがあり、上手に取り入れれば効率的な菌活が可能です。
本記事では、菌活に水分が大切であることを説明するとともに、菌活に有用な飲み物を紹介します。
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。 日本医師会認定産業医。 日本抗加齢医学会認定専門医。 NPO法人女性と加齢のヘルスケア学会更年期カウンセラー。 検診マンモグラフィ読影認定医。 日本気象予報士。 食生活アドバイザー、他。 浜松医科大学医学部医学科卒業。 妊娠や子育て、不妊治療、婦人科疾患など女性の一生をサポートし不安や悩みに応えるべく、多様な資格を活かしたトータルケアを目指し活躍中。
菌活とは?
菌活に有用な飲み物をお伝えする前に、菌活とは何かを確認しておきましょう。
菌活とは、腸内細菌バランスを整えることです。腸は体の免疫をつかさどり、栄養を吸収しながら有害な物質を排出する働きをしています。腸の健康を保つことが体の健康を維持し、美しさを保つ秘訣です。
腸内の善玉菌を増やすこと
菌活とは、腸内の善玉菌を増やして腸内細菌バランスを良くすることです。腸内には100兆個以上の細菌があり、主に善玉菌と悪玉菌、日和見菌の3種類が存在しています。腸内細菌バランスを良好に保つには、善玉菌を増やすことが必要です。
善玉菌は腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑え、腸の動きを活発にする役割をしています。腸内には70%の免疫細胞が存在しており、腸の働きが活発になれば病気の発症や病原菌などの感染から体を守ることができるのです。
菌活のメリット
菌活には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
たとえば腸内細菌バランスが改善されれば、有害物質の発生を抑えて肌のトラブルを減らすことができるでしょう。
腸内細菌バランスが悪化して悪玉菌が増えると便秘になりやすく、腸内に溜まった老廃物がアンモニアなどの有害物質を作ります。有害物質は腸から吸収され、体内を巡って肌まで運ばれることにもなるのです。肌に届いた有害物質は、肌荒れやニキビの原因になります。肌トラブルを減らすためにも菌活を上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。
また、人の体には外部から侵入する病原菌などを排除する免疫システムが備わっており、特に腸には7割もの免疫細胞が集まっています。免疫力は、20代をピークにして低下するとされています。いくつになっても健康でいるためにも菌活が欠かせません。
さらに、腸内細菌バランスが良いと短鎖脂肪酸が多く作られます。脂肪細胞は短鎖脂肪酸を感知すると栄養の取り込みをやめ、脂肪の蓄積を抑える動きをすることが確認されています。
菌活のポイント
菌活を有用に行うには、適度な運動やバランスの良い食事など、日常生活での工夫が必要です。
ここでは、菌活を成功させるためのポイントを紹介します。
適度な運動をする
適度な運動でお腹周りの筋肉に刺激を与えると、腸の働きが活性化されます。そのため、軽いウォーキングやストレッチなどの運動を習慣化すれば、有用な菌活が可能です。
ウォーキングではしっかり足を動かすことで、腸に関わる腸腰筋が鍛えられます。できるだけ大股で、ひざをあまり曲げずに歩くとよいでしょう。
お腹をひねるエクササイズも有用です。お腹周りに適度な刺激を与え、腸の動きを活性化します。
まず椅子に座って脚を組み、そのまま腰から上全体を片側にひねってください。その位置で静止し、深呼吸します。体を正面に戻し、足を組み替えて反対側にもひねりましょう。
ストレスや疲れを溜めない
腸の働きは自律神経と関わりがあり、ストレスや疲れによって自律神経が乱れると、腸内細菌バランスの悪化をもたらします。
自律神経には、活動しているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経があり、健康のためにはこれらのバランスがとれていなければなりません。
腸は副交感神経が優位になったときに活発に動くため、ストレスや疲れを溜めずにリラックスを心がけることが大切です。
バランスの良い食事を摂る
腸内細菌バランスを整えるためには、バランスの良い食事が大切です。食事では、生きた善玉菌を摂るプロバイオティクスと、善玉菌のエサになるプレバイオティクスの摂取を意識するようにしましょう。
プロバイオティクスは乳酸菌やビフィズス菌を含む食材で、プレバイオティクスは食物繊維やオリゴ糖が該当します。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせる方法(シンバイオティクス)も有用です。
それぞれの食材を見てみましょう。
【生きた善玉菌を摂取できる主な食べ物(プロバイオティクス)】
● ヨーグルト
● 納豆
● 漬物
● キムチ
● チーズ
【善玉菌を増やす主な食べ物(プレバイオティクス)】
(食物繊維)
● 野菜類
● 豆類
● 海藻類
● 穀類
(オリゴ糖)
● バナナ
● 玉ねぎ
● ニンニク
● 大豆
食べ物だけではなく、飲み物でも菌活ができます。次の項目で詳しく紹介しましょう。
菌活はしっかり水分をとろう!
菌活には水分の摂取が重要です。水分が不足すると便が硬くなり、便秘の原因になります。毎日こまめに水分を補給することを意識してください。
ただし、水をたくさん飲めばいいわけではありません。便通を良くするには、水分とともに食物繊維も必要です。また、1日に飲む水分の適量は人によって異なるため、1日に1.5〜2リットルを目安に飲みながら、自分に合う量を見つけるとよいでしょう。
なお、冷たい水は体の冷えにつながるため、常温で飲むことをおすすめします。
菌活に有用性のある水の飲み方
朝起きたときは、コップ1杯の水を飲むのが菌活に有用です。胃や腸に刺激を与えて腸のぜん動運動を促し、スムーズな便通をもたらします。日中もこまめに水を補給するようにしましょう。また、たまには炭酸水に代えてみるのもおすすめです。
菌活におすすめ飲み物5選
菌活に有用な飲み物も少なくありません。甘酒や乳酸菌飲料などには菌活に良い善玉菌や食物繊維が含まれ、高い有用性が期待できます。
また、食事で摂りづらい食物繊維も、スムージーにすればたくさん摂取できます。近年は菌活に特化した機能性ドリンクも各社から販売されており、より手軽に菌活ができるようになりました。
ここでは、菌活におすすめな飲み物を5点紹介しましょう。
甘酒
甘酒は、お米を麹菌で発酵させた栄養価の高い飲み物です。食物繊維が豊富で、善玉菌のエサになる水溶性食物繊維と、腸内の掃除をする不溶性食物繊維の両方が含まれています。
甘酒には、さらに善玉菌を増やす有用性のあるオリゴ糖も含まれ、プレバイオティクスとして菌活に有用です。
甘酒にはお米を麹菌で発酵させたものと、酒粕を使って作られたものがあり、どちらも菌活の有用性は変わりません。ただし、麹菌の甘酒は発酵過程で自然にできた糖分で甘みがあるのに対し、酒粕の甘酒には甘みがなく、砂糖を加えるのが一般的です。
また、麹菌の甘酒はアルコールを含みませんが、酒粕の甘酒にはアルコールが含まれ、子どもや妊娠している人は飲めません。
甘酒はただ飲むだけではなく、以下のようにいろいろな使い方ができます。
● 朝食やおやつに置き換える
● 料理の調味料として砂糖代わりに使う
● 豆乳や牛乳で割る
● ヨーグルトや果物を入れてスムージーにする
アレンジしながら毎日の食事に取り入れることで、有用な菌活ができるでしょう。
飲むヨーグルト・乳酸菌飲料
飲むヨーグルトや乳酸菌飲料には乳酸菌やビフィズス菌が含まれ、プロバイオティクスとして腸内の善玉菌を増やす有用性が期待できます。
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は腸内で長く生きられないため、菌活のためには毎日摂らなければなりません。飲み物であれば手軽に摂りやすく、続けやすいのでおすすめです。
ただし、乳酸菌やビフィズス菌は、胃酸の影響で死滅する場合もあります。特に空腹時は胃の中の酸性度が高くなるため、比較的胃酸の少ない食後に飲むようにするとよいでしょう。
スムージー
生の野菜や果物を使ったスムージーは、食物繊維やオリゴ糖をたっぷり摂れます。栄養価が高く、朝食代わりにもできる飲み物です。野菜や果物の皮部分には食物繊維が豊富に含まれているため、皮ごとスムージーにすることで多くの食物繊維を摂取できます。
スムージーを作るときは、水の代わりに無調整豆乳、アーモンドミルクなどを使うのがおすすめです。大豆やアーモンドの食物繊維が多く含まれ、菌活の有用性がより高くなります。甘酒や飲むヨーグルトを加えるのもよいでしょう。
特に菌活におすすめのスムージーを紹介します。
1.小松菜の菌活スムージー
(材料:コップ1杯分)
● 小松菜:1/2束
● キウイ:1/2個
● バナナ:1/2個
● ヨーグルト:30g
● 米麹甘酒:50g
(作り方)
1. 小松菜を3センチ程度の長さに切る
2. キウイを2センチ程度の角切りにする
3. バナナは皮をむいて一口大に切る
4. バナナ、キウイ、小松菜の順にミキサーに入れる
5. ヨーグルトと甘酒を入れて攪拌する
6. 滑らかになったらできあがり
食物繊維たっぷりで、プロバイオティクスであるヨーグルトが加わり、菌活の有用性が高くなるスムージーです。
2.バナナの菌活スムージー
(材料:コップ1杯分)
● バナナ:1本
● 無調整豆乳:100ml
● ヨーグルト:50g
● レモン汁:小さじ1
● オリゴ糖またはハチミツ:大さじ1
(作り方)
1. バナナは皮をむき、一口大に切る
2. ミキサーに1を入れ、ほかの材料をすべて入れて攪拌する
3. 滑らかになったら完成
バナナも豆乳もオリゴ糖が豊富な食材であり、ヨーグルトが加わることでより菌活に有用性のあるスムージーになります。
ハーブティー
ハーブティーを飲むことでも菌活ができます。特に菌活に有用なハーブは、ジャーマンカモミールとペパーミント、レモングラスです。夜寝る前などに飲むことをおすすめします。
ココア
ココアには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれ、菌活に有用な飲み物です。原料のカカオ豆にはカカオポリフェノールが含まれています。ココアには体を温める作用もあり、腸を温めて活性化する有用性も期待できるでしょう。
菌活には調整ココアよりも、100%カカオ成分の純ココアのほうがおすすめです。飲むときは少し濃い味にすると食物繊維が多く摂れ、体や腸を温める有用性も高まるでしょう。